(6) ナンテン(メギ科)Nandina domestica=家庭の
日本と異なり、西欧には実を鑑賞する園芸植物が少なかった。そのためか、この図版(Curtis 1811年、英国、銅版手彩色)には、我々が正月の生け花として愛でるつややかな赤い実ではなく、リンネの分類法に重要な花が描かれている。この図の説明には、「日本の家庭の玄関や中庭に必ず植えられているが、装飾のためだけなのか、何か特別の利用法があるのかは不明」。南天と難転の語呂合わせは、欧米人には理解できなかったようである。 ケンペルが自著『廻国奇観』(1712年)に、ナンテンを漢名「南燭 Nandsjokf」、俗称を「NattenまたはNandin」として紹介した。属名はこの最後の語Nandinから来ていることは明らかである。
1804年に中国からカーがイギリスに導入。比較的短期間のうちに英国の温室では珍しくなくなったとの事。英語名は葉の形と直線的に立つ茎から「天国の竹heavenly bamboo」。あるいは、赤い丸い実から、「カニの目」。今では欧米でも繊細な葉と鮮やかな実が冬の彩となる植えこみとして珍重されているが、繁殖力の強さからか、米国フロリダ州では有害侵入植物に指定されている。
2007年11月に訪れたワシントンD.C.では、空港の外のグリーンサークルにナンテンがびっしりと植えられていたが、オレンジがかった実がまるでぶどうの房のようにたわわについていて、日本のナンテンのイメージからはかけ離れていた(右)。日本では花時が梅雨で、雨のために結実の効率が悪いが,米国には梅雨がないため、こんなに沢山の実がつくらしい。それが鳥に食べられ、拡がっていくなら、なるほど、有害侵入植物になるのだろうと合点がいった。
赤飯に葉を添えるのは、彩りだけではなく、葉の殺菌成分が腐敗を防ぐ実際的な効果がある。果実には有毒なアルカロイド(ナンジニン、ベルベリンなど)を含み、多量に摂取すると体調不良や不快になる。小鳥はこのことを学習しているので大量には食べないし、ナンテンのほうも複数の鳥に少しずつ食べられた方が、種子が広範囲に散布されるので好都合(左 今尾景年 1891年 多色木版)。また白い実には、鎮咳作用があるといわれているが、赤実でも同様の効果がある。